『群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 群知能と意思決定の科学』

『群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 群知能と意思決定の科学』

レン・フィッシャー 著、松浦 俊輔 訳

より。

群れ

本を解説するときに、本文中の本質的な部分を引用し紹介するという方法がある。では、本に示されるいくつかの本質的な部分を足し合わせたたものと、その本一冊を読んだときでは、何が違うのか。


この本はたくさんの具体例を挙げながら、社会の複雑性への対処方法を示している。

イナゴやミツバチなど、動物の群れは3つの規則を持ち形作られる。回避(分離)・整列・引き寄せ(結合)である。
そのうち何匹かが目標の方向を知っており、大多数の他よりも速く移動する。他は、自分がついて行っているとも知らずに導かれ目標の場所にたどり着く。

リーダーは表立って先導する必要はない。
老子の言葉とされるもので、「人々がほとんど存在を知らない指導者が最善で……この指導者が動き、目標が達成されると、人々は『それは私たちが自分でやったことだ』と言う」というものがある。

あなたが立ち止まり上を見上げた時、上に何かを感じたからか、それとも周りにいる人間が上を見上げていたからか。

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何らかの値を答えるという問題(瓶の中のゼリービーンズの個数や肉の重さなど)では、個々のメンバーが独立に考えた答えの大半はそのメンバーの集団としての平均値より必ず成績が悪い。
平均をとるとほとんどのずれは相殺され、真の値に近づくためである。

では集団内の個人が独立しておらず、互いに影響を及ぼす場合はどうか。
そこには『集団思考』が現れる。それは、集団内の社会的圧力により、そのメンバーが自己欺瞞、強制的な合意形成、集団の価値観や倫理観への順応などによって特徴づけられる思考パターンに押しやられる現象のことである。

議論することにより正解から遠ざかることもあり得るし、それは上述の通り、結果的に隠れたリーダーに導かれているのである。(リーダーに導かれたから正解に近づくとは限らない)


この本には他にも数多くの例とともに複雑性に対処する方法が書かれていたが、それを応用させ実行するのは難しい。
なぜなら対象が複雑であるため、それと気づくことが難しいからである。

しかし、気にすることはない。自分の認識の外でも、自分の思考はこの本に導かれていることだろう。

群れはなぜ同じ方向を目指すのか?
レン・フィッシャー
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