Perfume 5th Tour『ぐるんぐるん』ーPerfumeという触媒を通して、テクノロジーの肯定から人間賛歌へ。

Perfume 5th Tour『ぐるんぐるん』について。

ナタリーより
ナタリーより

このツアーで自分が行った公演は広島での2日間のみなので、もう3か月以上たっています。このツアーに関して今でも強く心に残ることがあるのでここに書きます。

Perfumeといえば、エレクトリックな音楽から始まり、イメージ戦略としても、ライブの演出としても”近未来感”が強調されています。(だからこそ彼女らの、素での人間味のある部分がより光るのでしょう)

近年のライブでは、その近未来感の演出のために、様々な最新のテクノロジーが使われてきました。特に昨年のドーム公演では、最新技術による大掛かりで分かりやすい演出がありました。

それに比べると、この『ぐるんぐるん』は、アリーナツアーであったことを考慮しても演出方法がシンプルになりました。

しかし、僕は大掛かりな装置(最新のテクノロジー)を使うことが優れた演出ではないと思います。演出とは、人を引き込ませる物語の提供なのではないでしょうか。

そういった意味で、個人的には『ぐるんぐるん』の演出にとても感動しました。

それは「Music by 中田ヤスタカ」から「エレクトロ・ワールド」までの流れの部分です。
このライブでは、開始時の舞台セットと彼女らの衣装は、最新曲である「Cling Cling」をモチーフとした、オリエンタルで少し古めかしい通りと屋台をイメージしたようなようなものでした。

ライブ途中、Perfumeがはけたとき、オリジナルの音楽と共に、彼女らがそれまでその舞台で踊っていた姿の影が早送りでセットにそのまま映像として映し出されます。
その直後、舞台セットが、上に挙げた「Music by 中田ヤスタカ」の最中にゆらゆらガラガラと崩れ、全く様相の違う”近未来”的な世界に変わります。
元の舞台のあらゆる部分が移動し反転し、たくさんのスクリーンとなっていきます。

ここまで来たらチームPerfumeのホーム、観客をテクノロジーの世界へ連れて行ってくれます。

これまでの流れで、昔から今、そして未来へとテクノロジーによって日々進化しているこの世界を我々は目の当たりにします。

エレクトロ・ワールド
エレクトロ・ワールド

さらに、専用の衣装を着ての「エレクトロ・ワールド」。そこにあるのは、地面は砕ける、太陽は落ちる、猫だって空を飛んじゃうような自分の中の常識と全く違う世界。

僕は、仕組みがその裏にあったとしても、理解できないことがテクノロジーによって起こってしまうことを未来と言うのだと思っています。そして、理解できないことというのは大抵、実現してしまわないと想像もできなかったことではないかと思います。

これでテクノロジーのすべてが表されました。

人類の進化とはテクノロジーの進化だとも言えます。武器をつくり、火をつける方法を開発し、ことばが生まれた時から、テクノロジーがヒトにとっての世界を発展させ続けています。たまにテクノロジーが悪い結果をもたらすことがあっも、世界の進化のとテクノロジーの進化の方向は同一です。

テクノロジーというものを肯定することは、これまでの人類の歴史とこの世界、そしてこれから向かっている世界の肯定でもあると思うのです。それは人類それ自体の肯定でもあります。

僕はPerfumeと彼女らを支えるチームが、このライブにかかわらずですが、テクノロジーを肯定してくれていることがうれしいのです。この演出とはそういった思想をよく表す物語であると感じました。

また、テクノロジーの素晴らしさを表現するためにわかりやすいテクノロジーを使ってないという意味で、アート性というか演出としてのレベルの高さを感じました。

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